20 10月

10月のハーグ

ハーグ便り、最後に投稿してから夏が過ぎ、秋になってしました。

コロナ禍で書くことがあまりなかった。のではなく、夏の間、忙しすぎました。その忙しさは、オランダ生活史上最大でした。

企業の統合レポートやアニュアルレポート制作の仕事を東京の制作会社からリモートで受けているのですが、コロナで売り上げ減を恐れた制作会社さんが、それでなくても忙しいのに今まで以上に仕事を受注して、その影響が私にも及んだのでした。6月にロックダウンが解除され、やれ海だ、バカンスだと楽しそうに過ごしているオランダ人を後目にパソコンにはりつく日々は、春を家でやむなく過ごし、夜10時まで明るい夏の完全無駄遣いで恨めしく思いましたが、こんな時でも怒涛のように仕事がくるのはありがたく、仕事も夜ごはんも終えてもまだ明るい夜散歩を楽しむことで自分を慰めていました。

 

またもやロックダウン
6月まで毎日更新されていた陽性反応者、入院者、死亡者の報告も週一になり、7月は陽性反応者一日平均40人前後とロックダウンの効果も抜群。8月は一日平均80人とちょっと増えているけど大丈夫かなといったところだったのですが、9月に入ると雲行きが怪しくなってきました。9月1日の陽性反応者の数は3,597人でしたが、29日の発表では19,326人。28(日間)で割ると、一日平均561人です。

事態を重くみた政府は9月末、屋内施設やレストランは最大30人まで、家に呼ぶ人は最大3人まで、レストランの営業は夜10時までなどの新しい規制を発表。友人が勤める会社も週1~2回の勤務に切り替わりました。それでも勢いはおさまらず、10月に入ると、10月1日3,293人、10月7日4,517人、10月10日5,959人。この数字は累積ではありません。その日の陽性反応者の数です。そして、13日、ついにロックダウンが政府より発表されました。前回がインテリジェントロックダウン(intelligente lockdown)で、今回は部分的ロックダウン(gedeetlelijke lockdown)。飲食店は4週間休業、スポーツや試合などは一部禁止、夜8時からのアルコール販売禁止などが課されます。

前回は策を示すからあとは賢く立ち回りなさいを意味するインテリジェント(規則を破る馬鹿者には罰金という意味も💦)、今回は飲食店もテイクアウトOK、普通のショップや学校もOKということで部分的という言葉が使われました。ロックダウンのもつ衝撃を少しでも和らげようという意図があるのかもしれません。

私は在宅で仕事しているので、前回も今回も大きな影響は受けませんが、散歩の後や友人と集えるカフェが当分ないのはつらいなぁ。それに、前回の約12週のロックダウンで打撃をこうむった飲食店、大丈夫なんだろうか。6月に解除された後も、Te huur(賃借人募集)の張り紙がうら寂しく貼られた店が増えたような気がしただけに、本当に心配になります。

 

まるで前夜祭
さて、当日の14日。午後10時から部分的ロックダウンが始まります。いつものように家で働きながら、そろそろ晩御飯メニューを考えなくちゃなーと思っていた午後3時頃、ツレのぽーる丼から電話がありました。

「今日の夜、外にごはん食べに行こうよ!」

え、感染者一日6,000人なんですけど。

あまり外食したがらない人からロックダウン当日にお誘い。しかも店を選び、予約まで入れる手際のよさ。ロックダウンの意味、分かってるよね? 大人しく、静かに、外出を控えて。だよね?

「昨日と今日で何か変わる? しばらく外食できないんだよ!!」

そりゃごもっとも。いつも行く半テイクアウェイ的な食堂風情とは違って、予約してくれたレストランはとってもシック。アラカルトはなく、お店にあるもので料理するSocial Dealという名のプリフィックスメニューだけで、フェースシールドをつけたスタッフさんから「このメニュー、もうなくなっちゃったの。この料理はあと1品だけ残っています」などと、この時期ならではの説明がつきます。そんな、そんな、ステキな雰囲気の中でおいしい食事が楽しめるだけで、もう満足です。

同じように考える人はいるようで、夜7時頃にはレストランは満席になりました。それにスタッフやお客さんの間に妙な高揚感と連帯感が漂っています。この雰囲気、何かを思い出すなあ。なんだっけ。

「うちを選んで、来てくれて本当にありがとう。また会えるのを楽しみにしています」

スタッフさんの極上スマイルに見送られて店を出ると、ズンズンとお腹に響く音楽が聞こえてきます。カーラジオを大音響でかけているのかしらと音のする方に行ってみると、広場に面したカフェが大混雑、ハウスミュージックでバカ騒ぎ。わーなんだ、これ?! 感染者一日6,000人だよね??

その様子を報じたビデオクリップがこちら

お店で感じた雰囲気が何だったか、その時わかりました。「お祭り」。何に盛り上がっているのか、何で盛り上がっているのか。繰り返しますが、感染者が一日6,000人でています。オランダに住む知り合いから近くのパブも盛り上がっていた情報も入り、ハーグのカフェはあまりにもひどいということでテレビのニュースにもなりましたが、お祭りはオランダ全国あちこちで開かれていた模様です。

 

私は私の権利を主張する
一言でいえば“不謹慎”、”自分勝手”。医療第一線で働く人からすれば顰蹙の何物でもないのですが、周りのオランダ人、テレビのコメンテーターなどの反応は「アホちゃうか」。あきれつつも見放さず、一定の理解も示す関西的な「アホちゃうか」です。

昨晩の異様な盛り上がりの素は何なのか、ずーっと考え、ひとつの仮説を思いつきました。

オランダの人たちは、自由(というか個人の権利)が侵される事態に直面すると、即座に「私がどう振舞おうが自由」な個人の権利主張を作動させてしまうのではないかと。

知り合いのオランダ人とPCR検査の話をしたとき、彼が真っ先に言ったのは「僕には拒否する権利がある」(そこですか)

現在、マスク着用を強制すると「なんでしなくちゃいけない?」(え、なんでって聞く?)

普段は超合理的に物事を考えるのに、感染防止から導かれる合理的な振る舞いは通用しない。少しでも強制の香りがすると即座に条件反射してしまうのでしょうか。もちろん同調圧力は、宇宙空間の重力です。まるっきり効きません。圧力かけようもんならバズーカ砲をぶっぱなし、木っ端みじんに打ち砕きます。「みんなと同じ」を是とする国で育った自分は、この先何十年オランダで住んだとしても、このメガトン級の権利主張を身に着けることはできないでしょう。

会見通り飲食店は休業となりました。が、街はそれなりに人出があり、4月の息を潜めるような雰囲気はありません。変わったことといえば、マスク着用率が1%から一気に20%くらいにあがったことでしょうか。スーパーでもマスク姿が目立つようになりました。現在、マスクは着用を義務化する法整備をしているそうです。オランダ人のマスクのつけなさっぷりは隣国からも顰蹙をかっているようですが、法整備でもいない限り、とにかく、なんでか、どうしても、したくない人はしません。万能ではないけれど、有効なはずなのに、謎です。

もうちょっと深刻に捉えたら?と眉をひそめることもできるし、あなたがどう暮らそうがそれはあなたの自由よねと理解を示すこともできる。どこからが顰蹙でどこからが理解なのか、その境界線がさっぱりわからないので、判断は棚に上げることにしています。そんな私でもひとつはっきりと言えるのは、委縮するような雰囲気や圧力がないのは、ロックダウン中でもずいぶん暮らしやすい、ということです。

 

 

09 6月

6月のハーグ ~まちに賑わいが戻ってくる~

オランダでは、6月1日月曜日から、大幅な緩和策が始まりました。第一弾は飲食店などの営業再開です。予約を入れること(テラス席はその限りではない店が多い)、お客さんは一度に30人まで、席と席の間は1.5mあけること、なるべくPin(デビットカード)支払いなど、いろいろ制約つきですが、ともかく、いつもの街がもどってくる第一歩。インテリジェンス・ロックダウンが始まったのが3月半ばですから、約2か月半ぶりのことです。

ベンチに作られた新しいパテーション

とはいえ、感染者がゼロになったわけではありません。これを書いている6月9日現在、毎日更新されるRIVM(オランダ公衆衛生環境研究所)のウェブサイトでは、以下の数字が報告されています(かっこ内の数字は前日からの増加数)。

陽性反応者:4万7903人(+164)
入院者:1万1800人(+6)
亡くなった方:6031人(+15)

過去一週間を振り返っても、陽性反応者は毎日約100人単位で増えています。この増加は6月1日から検査が受けやすい態勢が整ったことに起因すると思われます。いずれにせよ、2か月前の4月9日の陽性反応者は1213人、5月9日では289人ですから、かなり少なくなりました。記録を見返すと、3月下旬から4月上旬が最もシビアだったことが分かります。

ショップなどは飲食店再開の前からすでにオープンしており、マスク率が1%にも満たないこともあって新型コロナウイルスは実は壮大なトリックなのでは?と思う日もしばしば。天気がよいとショップ前に列ができ(入場制限があり)、公園はピクニックを楽しむ人で混んでおり、運河では夏恒例のボートタイム(まるで居間にいるかのように寛ぎながらボートを操縦)を楽しむ人が出ていたし、みなさんもすでに貪欲に(笑)、レジャータイムを満喫しています。そうであっても、飲食店再開はやはり格別なものがあります。

ボートの中がリビングルーム化します

 

6月1日はPinkstrenという聖霊降臨祭の翌日で休日にあたり、しかも夏日。夕食後、よく通っているアイスクリームパーラーでアイスを食べた後、街はどんな風になっているか、デンハーグの中心を散策してみることにしました。

いきつけのアイスパーラーは「Florencia」といいます。イタリア人家族が始めた老舗で、デンハーグ下町を象徴するドローカルショップです。ハーグは国会議事堂や大使館が多くあることで「洗練」「エキスパット」のイメージがありますが、どっこいローカル色のつよい街です。そして、地元ハーグゼナーは口の悪いことでオランダ国内でも有名で、単刀直入なオランダ人でさえ涙がちょちょぎれるきつさなんだそうです。

Florenciaで、お気に入りの組み合わせ、Aardbeien(イチゴ)とCakeijs(ケーキアイス)。ケーキアイスはスポンジケーキ味なので、合わせるとイチゴケーキ味になります

 

ところで、Florenciaでは営業再開とはテラス席解禁を意味します。ここに通う人の大半が寄りあい所としてFlorenciaを利用しており、ほぼ毎日、決まった時間に集まってくっちゃべるのを日課にしていた人が大勢いました。なので、6月1日以前も営業はしていたのですが、常連さんにとってはアイスは買えてもテラス席がないというのは、閉店と同じこと。2か月半ぶりの再会に、嬉しそうに肘ごつき挨拶をしているのを見て、こちらまで和みました。

今のFlorencia(上)と1年前(下)。テーブルの間隔がとられています

 

中心街はというと……。相当な人出です。レストランによってはかなり混みあっているように見えますが、テーブル同士が不自然に空いていて、妙なスカスカ感もあり、本当に混雑しているのかがよくわかりません。そんな距離を保とうねという努力も虚しく、再会を喜ぶ友人らが次々と現れて人で山盛りになっているテーブルもありました。

密なんてなんのその、再会を喜ぶ人たちで混みあうテーブル。

裏路地風の狭い通りには合唱団が繰り出し、嬉しそうに聴く人たちでひとだかりができています。そんな混みあう道を横切るインドネシアのおばさんは、サンダル&ゆるゆるな服にマスク着用で強烈な違和感を放っています。ヒップなレストランのヒップな店員はフェースシールドをかぶってお客さんにVサイン。

道路にはいつの間にか片道通行と1.5㍍空けようね表示がつくられており、でも、守って歩く人はほぼ皆無。ある広場ではカフェの横にあるジムがマシーンを屋外に出しており、ランニングに黙々と取り組む人の横で、楽しそうにごはんを食べている人たちがいます。通りを走るトラムを見れば、乗客全員があんなに嫌がっていたマスクをしています(6月1日から公共交通利用の際はマスク着用が義務になっています)。

食事をしている人の横で黙々とエクササイズに励んでいます。

 

警戒している人、すでに終わったと思っている人、最初っから頓着していないと思われる人、つい忘れちゃった人、それなりに気を付けている人。同調圧力とは真逆の主張王国ならではの「あるある」なのでしょうか、それぞれの対処法が個人単位ではっきりくっきり際立ち、しかもそれぞれかなり違うために、久しぶりのにぎわいは警戒と喜びがサイケデリックに入り混じってどこかシュールでした。これがオランダ風「ニューノーマル」なのでしょうか。

おしゃれなカフェのベンチでは密に座らないよう×印がついています。さすがに座らない…と思います。

いつの間にかできていた、距離をあけつつ、右側通行の指示。

トラムの停留所の指示。1.5mあけて、ここで待とうねという指示ですが、気にしている人はあまりいませんでした。

 

 

 

 

 

10 5月

5月のハーグ

こんにちは。オランダのデン・ハーグにいるFAN世話人の水迫です。デン・ハーグはアムステルダムから南へ約1時間、南ホラント州の州都です。国会議事堂などがあることから国内政治の中心都市であり、各国大使館や国際司法裁判所などの国際機関もあります。国王もお住まいです。活気のあるアムステルダムと比べて、どこかのんびりした雰囲気があり、森が多いのも魅了です。

光栄にも『ハーグ便り』というページをいただきました。月一度くらい、オランダからお便りをお届けしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

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リレーブログにオランダの新型コロナウィルス感染のことを書いてから、はや2か月弱がたちました。今でも外出制限令は解除されていません。一時は一日1000人単位で陽性反応者が増加し、外に出るのも覚悟がいるほど緊迫した日々が続きましたが、2週間前くらいから陽性反応者、入院される方、お亡くなりになった方の数が減少に転じており、5月6日、政府は新たな施策を発表。緩和へと舵を切り始めました。

美容室やエステ、マッサージ、図書館などは5月11日から営業OK、6月1日からカフェ、レストランやバー、美術館、映画館もOK、中高等学校も再開。ただし、美容院などは予約、カフェは1.5mの間隔を保ったテラス席のみ、レストランやバーは予約制で従業員も含めて30人までというルールが設けられています。さらに7月、9月と段階を設けて緩和に進むようです。

外出制限令が発令された3月中旬以来、オランダでは珍しく晴天が続いています。雲がたれこめる鬱陶しい冬がやっと終わり、これから日光浴の季節!と心待ちしていたところに、この制限令。そもそも真冬でさえ、太陽が差すとダウンジャケットを着こんでテラス席でコーヒーを楽しむほど、日光を渇望する人たちです。夏と冬の日照時間の差がそれほどなく、冬でも穏やかな晴れ日がある日本では、ちょっと想像しにくいかもしれませんね。

春からの素晴らしい季節を心待ちにしていたオランダ人にとって、ずっと家の中で過ごすのは、そろそろ限界(厳しい時も、3人以下、距離保つというルールの元、散歩は許されていました)。緩和策が発表されてから初めての週末、友人と森や公園を散歩しましたが、人出は普通の休日。ただ、狭い道ですれ違うときにはお互い道をゆずりあったり、にっこり微笑みかけながらざざっと避けあったり。なんとなく、みなさんどことなく嬉しそうでした。

日本でも外出が憚られる日々が続いているようですね。他県ナンバーの車を白い目で見たり、営業している店に張り紙はったり、嫌な空気が漂っていると友人から聞きました。こちらでもルールを無視して傍若無人にふるまう人もいたりしますが、他人に関心がないのか、目くじらたてることはなく、基本、スルーです。

むしろ、注意したら「嫌なら、そっちが避ければいいじゃないか!」と、逆切れされるかもしれません。というのも、ルールがグレーゾーンなエリアですから、その人の「権利」に抵触する可能性があるからです。

以前、知り合いのオランダ人の娘さん18歳の誕生日会に呼ばれたことがありました。オランダでは18歳になるとナイトクラブなどに出入りすることが許されます。「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の扉が開かれる年齢です。娘の成長を喜びながら、父親は心配そう。「家のルールでまだダメは?」と尋ねたら、「それは無理。親だからといって、子どもに与えられている権利は奪えないよ」。その人のもつ権利は親と子の関係であっても、犯すことができない神聖なものだと考えているのだと感心したことがあります。

多少、社会モラル的にはどちらかというとアウトであっても、個人の権利を主張する。
「私も守っているんだから、あなたも守りなさいよ」
は、オランダでは通用しなさそうです。正義よりも個人の権利が勝ると考えているからなのかもしれません。

だからといってルールを守らず、好き勝手にふるまっているわけではないですよ。

待ち合わせ時間は正確だし、約束はきちんと守ります。そんな行動規範が「迷惑をかけない」よりも、「自分も相手もそのほうが快適」と合理的に考えるのではないか?と思います。