5月のハーグ

こんにちは。オランダのデン・ハーグにいるFAN世話人の水迫です。デン・ハーグはアムステルダムから南へ約1時間、南ホラント州の州都です。国会議事堂などがあることから国内政治の中心都市であり、各国大使館や国際司法裁判所などの国際機関もあります。国王もお住まいです。活気のあるアムステルダムと比べて、どこかのんびりした雰囲気があり、森が多いのも魅了です。

光栄にも『ハーグ便り』というページをいただきました。月一度くらい、オランダからお便りをお届けしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

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リレーブログにオランダの新型コロナウィルス感染のことを書いてから、はや2か月弱がたちました。今でも外出制限令は解除されていません。一時は一日1000人単位で陽性反応者が増加し、外に出るのも覚悟がいるほど緊迫した日々が続きましたが、2週間前くらいから陽性反応者、入院される方、お亡くなりになった方の数が減少に転じており、5月6日、政府は新たな施策を発表。緩和へと舵を切り始めました。

美容室やエステ、マッサージ、図書館などは5月11日から営業OK、6月1日からカフェ、レストランやバー、美術館、映画館もOK、中高等学校も再開。ただし、美容院などは予約、カフェは1.5mの間隔を保ったテラス席のみ、レストランやバーは予約制で従業員も含めて30人までというルールが設けられています。さらに7月、9月と段階を設けて緩和に進むようです。

外出制限令が発令された3月中旬以来、オランダでは珍しく晴天が続いています。雲がたれこめる鬱陶しい冬がやっと終わり、これから日光浴の季節!と心待ちしていたところに、この制限令。そもそも真冬でさえ、太陽が差すとダウンジャケットを着こんでテラス席でコーヒーを楽しむほど、日光を渇望する人たちです。夏と冬の日照時間の差がそれほどなく、冬でも穏やかな晴れ日がある日本では、ちょっと想像しにくいかもしれませんね。

春からの素晴らしい季節を心待ちにしていたオランダ人にとって、ずっと家の中で過ごすのは、そろそろ限界(厳しい時も、3人以下、距離保つというルールの元、散歩は許されていました)。緩和策が発表されてから初めての週末、友人と森や公園を散歩しましたが、人出は普通の休日。ただ、狭い道ですれ違うときにはお互い道をゆずりあったり、にっこり微笑みかけながらざざっと避けあったり。なんとなく、みなさんどことなく嬉しそうでした。

日本でも外出が憚られる日々が続いているようですね。他県ナンバーの車を白い目で見たり、営業している店に張り紙はったり、嫌な空気が漂っていると友人から聞きました。こちらでもルールを無視して傍若無人にふるまう人もいたりしますが、他人に関心がないのか、目くじらたてることはなく、基本、スルーです。

むしろ、注意したら「嫌なら、そっちが避ければいいじゃないか!」と、逆切れされるかもしれません。というのも、ルールがグレーゾーンなエリアですから、その人の「権利」に抵触する可能性があるからです。

以前、知り合いのオランダ人の娘さん18歳の誕生日会に呼ばれたことがありました。オランダでは18歳になるとナイトクラブなどに出入りすることが許されます。「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の扉が開かれる年齢です。娘の成長を喜びながら、父親は心配そう。「家のルールでまだダメは?」と尋ねたら、「それは無理。親だからといって、子どもに与えられている権利は奪えないよ」。その人のもつ権利は親と子の関係であっても、犯すことができない神聖なものだと考えているのだと感心したことがあります。

多少、社会モラル的にはどちらかというとアウトであっても、個人の権利を主張する。
「私も守っているんだから、あなたも守りなさいよ」
は、オランダでは通用しなさそうです。正義よりも個人の権利が勝ると考えているからなのかもしれません。

だからといってルールを守らず、好き勝手にふるまっているわけではないですよ。

待ち合わせ時間は正確だし、約束はきちんと守ります。そんな行動規範が「迷惑をかけない」よりも、「自分も相手もそのほうが快適」と合理的に考えるのではないか?と思います。

 

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