16 3月

新型コロナウィルスでオランダは今?!

今回は、オランダに住む広報担当の水迫から、新型コロナウィルスが拡大してるオランダの現状報告です。今、彼の地はどうなっているのでしょう?

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こんにちは。ハーグ在住の水迫です。WHOがパンデミックを宣言、震源地は今や欧州に移ったと報告しました。イタリアの全面封鎖(Lock downと言われています)にはじまり、スペインも、フランスもレストランや映画館など多くの商店が閉鎖、3月15日、ついにオランダも全学校休校、レストラン、カフェが4月6日まで休業となりました。2月中旬から一か月のオランダの変化を、生活目線でお伝えします。

 

2月中旬……差別の噂が飛び交う
ちょうど日本で感染者が拡大して大騒ぎになっていた頃。オランダは感染者数ゼロで、ハーグの中華街では旧正月の爆竹が盛大に鳴り響き、しばらくしてオランダ南部では恒例のカーニバルが例年どおりに始まりました。すでに北部イタリアで感染拡大が話題にはのぼっていましたが、まるで他人事。3月初旬に一時帰国する予定にしていた私は、帰るかか否かで迷いまくり、情報を集めまくっていたので、自分と世間との温度差は、極寒と亜熱帯くらい違うものでした。

その頃、ポツポツと中国人(ひいてはアジア人)が差別されるという噂が入ってきました。とある日本人ご家庭では、子どもが学校でばい菌扱いされて泣いて帰ってきたそうです。確かにその頃は、コロナウィルス=中国を発端にアジアが広めた迷惑なモノという扱いでしたから、マスクなぞして外出しようもんなら「危ないアジア人」認定されそうな空気感がありました。

私も、友人とアムステルダムを歩いていたら、向こうから歩いてきたオランダ人にすれ違いざまに「xxxxJapans」と言われました。「xxxx」が聞き取れなかったのですが、笑っていなかったし、若干捨て台詞っぽかったので、よいことではなかったと思います。いい気持ちはしませんが、そういった人たちを相手に一喜一憂するのは時間の無駄。その後に入ったカフェの店員さんのとびっきりの笑顔が全てを帳消しにしてくれました。

関東にいる兄家族から「マスクがなくて困っている」という話を聞いていたので、帰る気でいた私は、マスクをお土産にしようと思い立ちました。

さて。どこで買えばいいのだろう? オランダにもマツキヨのようなドラッグストアがありますが、マスクを見かけたことがありません。というか、そもそもマスクをつけた人を街中で見かけたことがありません。花粉症がないからでしょ!という声が聞こえてきそうですが、白樺やヤナギの花粉症はあります。春に日本に遊びに来たオランダ人から「なんでみんなマスクしてるの? 病気なの?」という質問をよく受けたものですが、それだけマスクに馴染みがないわけで、「マスク着用で危ない人認定されそう」は、そういった背景があります。

オランダ人夫から、”DIYショップに行け”アドバイスをもらい、DIYチェーン店ショップ「Karwei」に行くことにへ。

DIYショップでは粉塵マスクしかなく、1つ€4は下らないお値段。高いなあ、でも30個くらいは送りたいかなあと、ぽいぽい買い物かごに入れていたら、かさばることもあってあっという間に山盛りに。コロナウィルス=アジア人の図式が目立っていた時期だけに、顔から火がでるほど恥ずかしく、レジに並ぶ後ろのカップルも、その量に目を丸くしています。キャッシャーのおばちゃんに聞かれもしないのに「日本にいる家族がね、マスクがないらしくてね」と言い訳をすると、おばちゃんは「そうよね、日本は大変よね~」といたく同情してくれました。オランダ人にとっては、そのくらい遠い話でした。

 

2月下旬……初の感染者1人。手洗いソープが棚から消える
2月27日、オランダで初感染者が報告されました。ゼロなはずがないというのが世間の見方だったので、やっと報告があったと、どちらかといえばほっとした印象でした。というのも、近隣国でこれだけ拡大しているのに地続きのオランダでゼロであるはずがなく、ゼロが続けば隠蔽しているのではと政府への不信感が高まる可能性がありました。感染者第一号はすでに感染が広がっていた北イタリア帰りのオランダ人でした。

その後からオンライン上でマスクの売り切れが目立ち、スーパーでもある商品が品薄になり始めます。その商品とは、ハンドソープ。消毒用ジェルではなく、いわゆる普通のハンドソープです。

うすうす気づいてはいましたが、オランダ人の多くは手洗い習慣がないようで、ADという新聞のアンケートによると、お手洗いの後、なんと50%のオランダ人が石鹸で手を洗わないと答えたそうです。外出後の手洗いも言わずもがな。在蘭日本人の間では「これでオランダ人に手洗い習慣が根づくね」と、この傾向を喜び合っていました。幼い頃から手洗い習慣を叩き込まれていた日本人にとって、手を洗わないオランダ人は密かにストレスだったのですね。

2月28日……感染者2人
3月1日……感染者10人
3月2日……感染者18人
3月3日……感染者24人

 

3月4日頃……感染者38人。パンは自分で焼こう
感染者オランダでは、公衆衛生研究所であるRIVM(Rijksinstituut voor Volksgezondheid en Milieu)が毎日、感染者の数を報告しています。27日の1から6日後の3月4日、38人の感染者が確認されました。ほとんどの人が北イタリア帰りです。結局、私は日本行を断念しましたが、情報収集に余念がなかったため、危機意識が他のオランダ人より少し先をいっていました。

今後に備え、保存食を余計に買っていたほうがいいかなと思うようになっていました。私よりも百倍用心深いオランダ人夫は、すでに外出する度にせっせとストックを買うようになっていました。缶詰(豆類)、パスタ、大量のタマネギ、乾燥豆、ミューズリー、そして小麦粉。それも全粒粉、スペルト、薄力粉、強力粉とバラエティ豊かに取り揃えています。普通のスーパーでもこれだけの種類が普通に買えるのだと妙なところに関心しながら、そうだパンが焼けるな。ならイーストだとスーパーに行くと、なんとドライイーストが品切れ。小麦粉は日本人の米にあたる存在なのだということを改めて認識しました。

教訓。”非常時はパンは自分で焼け”。

3月5日……感染者82人
3月6日……感染者128人、初の死亡が確認される。
3月7日……感染者188人
3月8日……感染者265人

 

3月9日……感染者321人。握手は自粛しましょう
感染者は382人になりました。つい一週間前の38人から10倍です。1日前にはイタリアでは全土封鎖宣言がでましたが、オランダでは特に動きなし。これでいいのだろうか……。「EU諸国のみなさん、私たちと同じ道をたどらないよう、どうか自衛してください」とイタリアの首相が言っていたのに。

その夜、ルッテ首相から新しい対策の発表がありました。それは「今後しばらくは握手しないように」でした。宣言直後にRIVMの所長とうっかり握手を交わし、「あ、いけね!」と手をひっこめ、肘をごつきあう新しい挨拶を紹介して、その後、肩をポンポンと叩くというおまけつきでした(笑)。

その数日前、テレビでハーグの国会議事堂にいる政治家に「入口に備え付けた消毒ジェル、使ってる?」とレポーターが突撃取材したり、トークショーのゲストが「俺ね、手術用手袋、持ち歩いてるよ、ほら! がはは」という笑う様子が放映されたりしてました。

それらを観て、どんな時でもジョークを忘れないオランダ人と好意的にとらえていたら、横で一緒に観ていた夫の顔がみるみる険しくなりました。「真剣に向き合っていない。ふざけすぎている」。夫に言わせると、オランダ人は何事でも大したことじゃないよ、フツーだよというポーズをとる癖があり、それは「贅沢を好まず、地に足のついた生活をしろ」という国民的傾向からきているかもしれないが、非常事態においてはそれは違うのではないか。また、ジョークを交えることで「深刻じゃない」と間違ったメッセージを視聴者に送ることになる、あるいは本当に大したことないと捉えているなら、そんな政府に自分の生活を脅かされるのはまっぴらだ。

真剣すぎてジョークを飛ばそうもんなら首が飛ぶ(最近、飛びませんが)日本の政府と、あ、握手しちゃった、いけね!と余裕のオランダ政府。あまりにも違いすぎるし、どちらがいいのか悪いのか、正しいのか、正しくないのか考えをまとめることができませんでした。

3月10日…感染者382人、死亡者合計4名

 

3月11日…感染者503人
毎日、午後過ぎにRIVMからアップされる「本日の状況」をチェックするのが習慣になりました。10日の382人から一挙に100人以上超えの503人を見た時は軽いショックを覚えました。増加が著しいのは北ブラバント州です。その多くは経路が追えないとのこと。カーニバルのせいではないか?という説もありますが、確かではありません。

 

3月12日……感染者614人。国民、ハムスターになる
午後4時に新たな対策が発表されました。

● 風邪をひいたり熱があったりする人は家から出ないこと。症状が重くなったらホームドクターに連絡をとること。
● 100人以上の集まりはキャンセルすること。
● 可能なら在宅勤務に切り替えること。
● お年寄りや身体の弱い人は集まりや公共交通機関の使用を避けること。そのような人の訪問を極力避けること。
● 大学、高等教育機関閉鎖

やっと真剣に取り組みだした。が、遅すぎないか、まだゆるくないか?という声が私の周りでは多く聞かれました。ちなみに、その頃は私の行動範囲は徒歩圏内のみで、友人との約束も次々と延期、キャンセルとなりました。

用心深い夫のおかげで家には1週間外出しなくてもすむくらいの食料の蓄えができていたのですが、スーパーがどんな感じになっているのか知りたくて、夕食後近くの大型スーパーに行ってみました。ない。イモも、野菜も、肉も、パンも、トイレットペーパーも。棚がすっからかんです。国民スナック、ポテトチップもほとんどゼロ。買いだめ行為を差すオランダ語の動詞は「ハムスターする/hamsteren」です。新しい対策を発表するルッテ首相も、「みなさん、ハムスタらないでください!」と怒りながら言っていました。

 

3月13日……感染者804人。子どもたちは?
大学は休校となりましたが、子どもたちはどうしているのでしょう? 親御さんたちは? 子どもがいないので子持ちのご家庭の様子を知りたく、アイントフォーフェン在住のフリーランスライター山本直子さんの許可を得て、彼女のブログを紹介します。ちなみに、山本さんは先月、オランダの何もしない豊かなライフスタイルを紹介した書籍『週末は、ニクセン』(大和出版)を上梓されています。
新型コロナウィルス:感染防止はゆるゆる、ハイテク措置はばっちりのオランダ

 

3月14日……感染者959人、合計12名の死亡を確認
まちにはひとっこ一人いません。……とレポートしたいところですが、ショップはまだオープン、混んではいませんがカフェにも人が入っています。スーパーは品薄が続くものの、普通に営業。店内はクリスマス休暇前のアグレッシブな雰囲気が若干あるものの、目が合えばにっこり、道ですれ違えば「ハロー」は変わらず健全です。ジャムコーナーでは、ハチミツがとびぬけて品薄になっていました。ちなみに、お隣の国ベルギーでは13日夜からカフェ営業中止になったそうで、隣接するゼーラント州にベルギー人が越境してお茶を楽しんでいる姿が数多く目撃されたそうです。

 

3月15日……感染者1,135人、そして6時に追い出される
毎日家にいるのが苦痛になり、友人と一緒に森を散歩することにしました。電車やバスを使わなくても、そんな森や公園に行けるのがオランダのいいところ。同じように考える人がいるもので、家族連れ、友人同士でそぞろ歩きをしながらくっちゃべる人たちがあちこちにいました。林床には可憐な白い花を咲き乱れ、カイツブリが川をすいすい泳ぎ、木々が芽を吹き始めています。これからいい季節なのになー。

ひとしきり歩いた後に、カフェへ。オランダでは極寒の冬でもテラス席が用意されており、みんな着込んだままお茶を楽しみます。そういったわけで、私たちもテラス席へ。お隣のオランダ人グループは、「あ、ハグ禁止だった!」と、ひじ、お尻でごつきあって挨拶していました。

「6時には締めるから、お会計してくれる?」と突然店員が言ってきて、急き立てられるように店を後にしました。家に戻って、政府からさらに対策が発表されたことを知りました。

● 16日から4月6日まで小学校、保育園、MBOの学校休業
● 飲食店は本日6時から4月6日まで休業
● スポーツクラブ、フィットネスクラブ、サウナ、セックスクラブ、コーヒーショップも同様に休業
● 4月6日まで人と人の距離は1.5mを保つ

政府高官が、サウナ、フィットネスに続いて淡々とセックスクラブに言及する姿に面食らいながら、ついにここまできたかと思いました。明日からまちの風景ががらっと変わってしまうのは間違いありません。不便かもしれませんが、感染者が倍増していること、隣国と足並みが揃ったことで、ちょっとほっとしたという気持ちも正直あります。

この6時閉鎖の通達は、30分前の午後5時30分に発表されました。その特急っぷりは、日本の突然の一斉休校タイミングどころではありません。ちょっと急すぎません?とブツブツ文句を言いながらも、押しなべてみなさん受け入れているようです。

普段の生活では個を大切にするオランダですが、時にトップダウンを強行するときもあります。政府の命令に従うというよりも、それが社会の益になるなら協調しようと考えるようです。細かくは色々あるようですが、政治は国民のために存在しているという信頼感と、市民の参加意識の高さのおかげだと思います。ちなみに、あ、握手しちゃったルッテ首相はこの非常事態を冷静に対処しているとお株を上げています。また、お子さんがいるご家庭では、政府からのクリアなメッセージにどのように行動すべきかが分かって安心できたという意見も聞かれます。

ところで。新しい対策の発表直後、長い列ができたショップがありました。それは、コーヒーショップです。コーヒーショップとは、大麻が吸える/お持ち帰りできるカフェです(一定の量のマリワナを持ち帰って家で吸うのはOK)。4月6日まで休業??そりゃ大変!と、大麻をハムスタりたい人々が大挙して押し寄せたのでした。

 

3月16日……感染者1,413人。トータルロックダウンはしない
新しい対策が発表された翌日、感染者は278人増えました。深刻さは日に日に増しています。テレビもコロナウィルスの話題でもちきりです。

今晩夜7時にルッテ首相から国民に向けての10分間のスピーチがありました。外務省のウェブサイトに概要が和訳されているので、ぜひご覧になってください。

「コロナウィルスを最大限コントロール」「コントロールできず感染が広がる」「国を停滞させる」の3つのシナリオがあり、オランダは最大限コントロールのシナリオをとるというものでした。つまりイタリアのような全面封鎖(トータルロックダウン)する道を選ばないという意味なんだと思います。

そして、ワクチンがないなか、オランダに住む多くの人が感染する可能性があることにも触れています。お年寄りなど弱い人を最大限に守りながら医療のキャパシティを確保することに注力し、同時に経済支援も行うということでした。

世間は押しなべて好意的にとらえているようです。素晴らしい、力強いスピーチだったという声も聞こえてきます。

放映中、残念ながら私はスピーチの80%が理解できなかったので、もっぱら声のトーン、ボディーランゲージに目が向きました。両手をテーブルに置き、冷静に伝えるよう指示があったのだと思いますが、身体を前後にゆすり、ネクタイがゆれ、使いたいところをぐっとこらえいるのか、たまに手がテーブルから浮いていました。伝えたいという気持ちが全身から伝わってきました。

私の隣にいる人(夫)は、オーソリティーを全く信じていないので、一定の評価をしつつ、「集団免疫を得ることで感染拡大が抑えられるっていうけど、インフルのように感染後に免疫ができるってなんで言える?」「なんで隣国に先駆けて言わない?」

オランダがとった道が良策だったかどうかは、多分、数年後でないと評価できないと思います。そして、私は自戒を込めて、礼賛方向に気持ちが振れないようにしています。

というのも、日本とあまりにも違うからです。オランダと日本を比べると日本は迷走しているように見えます。力強く伝える胆力がないのか、責任をとりたくないからか、風土になじまないのか。あまりにも振り幅が大きいため、思考停止に陥り、オランダの声明を盲目的に信じるという極端に走ってしまうかもしれないからです。信頼する、しないという意見を醸成するには、社会への参加意識があまりにも低かった自分を自覚しています。

オランダにきて強烈な違いを感じるもののひとつが、市民の社会への参加意識の高さです。オランダ政府が力強い声明が出せるのは、政府の性格によるのではなく、国民が強いから。強くいられるのは社会を成しているのは自分に他ならないという自覚があるから。お上の言うことを自分なりに咀嚼して意見を形成するプロセス、つまり社会参加意識をもたずにきてしまった自分に、冷静な判断ができるとは思えません。

そんな私でもひとつはっきり言えるのが、トップからのクリアなメッセージは、次に何をすればいいのか、その中でどんな行動をとればいいのかという指針を国民に与えてくれるということ。それによって、粛々と暮らす基盤ができるのだと思います。

追伸:一転してコーヒーショップは再開となりました。ストリートギャングによる売買を避けるためだそうです。

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