スヘフェニンゲンの思い出

リレーブログ第8回は、監事の田中さんです。ロッテルダムの日本人学校の校長だった田中先生の、オランダの思い出の一片をおすそわけ。
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新聞に、「盗難ゴッホ 伊で発見」という記事が載っていました。14年前の2002年12月、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館から盗み出された油絵2点が、イタリア南部ナポリのマフィアのアジトで発見され、押収したというものです。 作品は、「ニューネンのプロテスタント協会を出る会衆」と「スヘフェニンゲンの海の眺め」の2点で、いずれもゴッホがフランスに移り住む前の1810年代に描かれた作品とされているものです。額縁がなくなった以外おおむね良好な状態で、オランダへ返還される予定とのことです。地元メディアによると、市場価格は2点合わせて数百万ユーロ(数億円)になるということです。

新聞に載ったこの二つの絵は、ゴッホ美術館で見た記憶があり、滞在当時のカタログを久々に出してみました。カタログでは「ニューネンの改革教会」「嵐が迫るスヘフェニンゲンの浜辺」という題名で載っていました。この記事のおかげで、スヘフェニンゲンの風景をあらためて思い浮かべることとなりました。

スヘフェニンゲンはハーグ市内から電車で15分ほどのところにあるリゾート地域の美しい海岸で、夏は日光浴を楽しむ人で賑わう所です。また、魚介類を扱う店があり、ロッテルダムからよく買い出しに通った思い出のある海岸でもあります。ここではマグロや数の子なども手に入れることができました。

「スへフェ」という発音は喉の奥を震わせるようなオランダ独特の発音をします。世界大戦中、敵国ドイツ兵を識別する言葉に使われたと言われています。在住する日本人から、最初は「スケーべニンゲン」と教わり、なんともまた変わった地名があるものだと思ったものです。発音が難しいためスケーべとしたほうが簡単で、地名が覚えやすかったのかもしれません。この浜辺はトップレスで日光浴をする姿が見られることがあり、そうした光景に出くわすと、見て見ぬ振りしながらも、まさにスケベニンゲンとなってしまうのです。

ここでは、日本であまり知られていない行事があります。それは正月元日に行われる寒中水泳です。元日の朝、オランダ各地から大勢の人が集まり、真冬の冷たい北海に入るのです。浜辺に大きなステージが作られ、大音響とともにインストラクターがエアロビクスのような体操をし始めると、水着姿の群衆が一斉にそれに合わせて掛け声を出しながら体操をし始めます。冷たい海に入るため、長時間にわたり入念に準備運動が行われ、その熱気は寒気の中に湯気が立つほどでした。12時の時報とともに、一斉に海に向かい入水するも、その多くは下半身が浸かるくらいのところですぐに引き返すのでした。北海の冷たさは、それ以上人を寄せ付けなかったのです。

この光景は、日本でいう禊(みそぎ)のオランダ版ではないかと思いました。オランダの元旦はこうして開けるのです。この時の様子を撮った記憶があり、アルバムの中から探し出し、今は昔となったスヘフェニンゲンの思い出に浸るのでした。

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次回は世話人の水迫が、シンタクラースを現地より実況中継する予定です! お楽しみに。

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