05 9月

「よみがえれ!シーボルトの日本博物館展」

お盆の入りの8月13日(土)、千葉県佐倉市の「国立歴史民俗博物館」(歴博)で開催中の特別展「よみがえれ!シーボルトの日本博物館展」を各自見学(第1部)、午後は、歴博教授の日高薫先生の講演を聴講(第2部)、引き続き京成佐倉駅前の居酒屋に席を移し、賑やかに懇親会を開きました。

今回は、懇親会場の都合等の事情から、参加者人数を15名に絞らざるを得ず、折角の参加ご希望をお断りさせていただいた方々には、大変申し訳なく思っております。

また、入場券の手配・懇親会場のセッティング等に関して、歴博および佐倉日蘭協会に大変お世話になりましたこと、心より御礼申し上げます。

第1部は、今回の「よみがえれ!シーボルトの日本博物館展」の展示企画代表者・日高教授の「ギャラリートーク」に参加し、更に展示を見学しました。

今回の特別展は、シーボルト没後150年を記念して開催されました。フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796~1866)の日本に関する収集品(シーボルト・コレクション*¹)については、最初の来日時(1823~29)、例の「シーボルト事件」(ご禁制の日本地図の持ち出し)のため追放され帰国した後、オランダ政府が買い上げ、現在ライデンの「国立民族学博物館」に展示されているもののほか、追放から約30年後に再来日した際に(1859~62)持ち帰った収集品は、主として、シーボルトの出身地ドイツの「ミュンヘン五大陸博物館」(旧バイエルン国立民族学博物館)やシーボルトの末裔家「ブランデンシュタイン城」(ドイツ中部ヘッセン州)に所蔵されています。

ミュンヘンのシーボルト・コレクションは、実に6,000点に及びますが、必ずしも十分には整理されていないものを、歴博が独自に9カ年かけて調査し、今回その中から約300点を精選して、「日本博物館」と云う形で、歴博内に復元したものです。

第2部は、日高教授の「シーボルト・コレクションにおける漆工芸」と題した講演です。
講演の主な内容は、歴博が行ったドイツ・オランダにおける調査研究の成果をもとに、コレクションに含まれる多彩な漆工品の実例を紹介しながら、シーボルト自身が書き残した記述や長男アレクサンダー(1846~1911)によってまとめられたコレクション・リスト(「ミュンヘン五大陸博物館」)等の資料を手掛かりに、シーボルトが、どのような意識でそれらを収集したのか、そして、どのように「日本博物館」に位置付けようとしたのかを考察したものです。

日高教授の大変興味深い講演内容の概略を、第1部の「ギャラリートーク」と併せてご紹介すると、おおよそ以下の通り。

  • シーボルトは、西洋世界に向けての日本紹介を、「日本植物誌」等の著書の出版のみならず、自らの収集品の博物館展示を通じて行おうとしていた。
  • 何回かのコレクションの展示は、本格的な日本紹介とともに、民族学博物館の嚆矢でもあった。
  • 「シーボルト・コレクション」の中で、漆工芸品が占める数量的割合は極めて多く(特に2回目の来日時の収集品)、シーボルトが、漆器の収集にとりわけ熱心に取り組んだことは明らか。
  • シーボルトは、「漆工芸が、日本ほど高い完成度に到達した国は世界にない」と書き残している。
  • 日本国内の協力者への配慮・新旧の漆工芸品の分類の困難性等の事情もあり、蒔絵や螺鈿で豪華に装飾された高級品から、中級品、日常品・土産物等廉価な漆器に至るまで、幅広い品質の漆工品が収集されている。
  • 有力者からの贈答品や競売等で買い求めたものもあり、地方産・琉球・中国の漆器も含まれている。
  • シーボルトの日本に関するコレクション展示(「日本博物館」)は、「コレクションを体系的に整理するのは困難なので、そのものの使い方に従って考察し、一部工芸的価値を強調し、技術的細工を説明する」方針でされている。
  • 今回の歴博展示は、上記の趣旨に沿って、「日本博物館」を復元しようとしたものである。

以上かなり専門的なお話しでしたが、260人収容の会場一杯の聴衆みな大満足した講演会でした。

講演後は、京成佐倉駅前の居酒屋「庄や」に移動して、賑やかに懇親会が開かれました。一日中お忙しかった日高教授には、ここにもご参加いただいた上、伝統ある漆工芸・芝山細工の女流職人松本香さんも加わって(松本さんは、過日、FANの友好団体の一つ「江戸連」で「江戸の工芸・芝山細工の盛衰について」と云う講演をされました。)、幅広い話題で大いに盛り上がりました。

こうして筆者が家に帰り着いたのは夜の9時を過ぎていて、本当に充実した一日でした。

(村岡洋二)

 

*1 : 欧州各地に広く収蔵されている所謂「シーボルト・コレクション」は、数万点に上ると言われていますが、実はその半数は、シーボルトの子供たち、特に次男のハインリッヒ(1852~1907)が、オーストリア・ハンガリー帝国の通訳・外交官等として日本滞在中に、父の遺志を継いで、精力的に収集したものだそうです。


【日高薫教授のプロフィール】
1985年、東京大学文学部卒業、杉野女子大学講師、東京大学文学部美術史研究室、共立女子大学国際文学部、日本文化研究助手を経て、1994年、国立歴史民俗博物館に勤務。2008年、文学博士(東京大学)。現在、国立歴史民俗博物館研究部情報資料研究系教授
主な研究テーマは、蒔絵を中心とする漆工芸史、日本の装飾芸術の特質及び交易品としての漆器をめぐる文化交流。
主な著書に『異国の表象―近世輸出漆器の創造力』(2008年ブリュッケ刊)、『日本美術のことば案内』(2002年小学館刊)がある。